カーボンは軽量で強度が高いため、ロードバイクのフレームに最も適した材質です。
そのため、愛車がカーボンフレームの方も多いでしょう。
しかし性能は素晴らしいですが、価格が高いので次々と買い換えられるものではありません。
せっかく買った大事な大事なカーボンフレームですから、
「いつまで使えるのだろうか?」
「落車したけど大丈夫かな?」
と疑問に感じますよね?
そこで今回は、
- カーボンフレームの寿命はどのくらいか
- どういう状態だと乗ってはいけないか
- 寿命を縮めない方法
を解説していきます。
カーボンの特徴
そもそもカーボンとは?
「炭素繊維強化樹脂(CFRP)」のことです。
簡単に言うと、炭素繊維をプラスチック樹脂で固めたものです。
特徴は、
- 軽い
- 高い強度
- 自由に形を作れる
- 衝撃吸収性が高い
とてもハイスペックです。
その性能の高さから、自転車だけでなくテニスなどのスポーツ用品、自動車や飛行機、建築物にまで幅広く使われています。
実はカーボンは長寿命
カーボンは寿命が短いと言われることがありますが、それは間違いです。
実はカーボンは長寿命。
なぜなら、カーボンは経年劣化に非常に強いからです。
長期の屋外での耐久試験でそれが示されています。
屋外暴露33年目までのCFRP板の劣化状態
簡単にまとめると
- 銚子、旭川、宮古島での33年間の実験
- 一方向(UD)カーボンでは、20年目から弱くなり始めた
- 織物(クロス)カーボンでは、33年目から弱くなり始めた
「一方向(UD)」「織物(クロス)」はカーボン繊維の組み方の向きのこと。
フレームに使われているカーボンは、UDカーボンが多いです。
宮古島は、紫外線が強くて潮風の影響もあり、気温も高い過酷な環境です。
それでも20年は問題なく耐えたわけです。
十分な耐久年数だと思いませんか?
また、ロードバイクは屋内保管することが一般的。
室内であれば、紫外線や雨風の影響をほぼ受けません。
それに加えて、カーボンフレームは塗装やUVコーティングが施されています。
これにより、経年劣化を更に抑えられています。
つまりカーボンフレームは、とってもとっても長寿命なわけです。
強度自体も強い
経年劣化に強いだけでなく強度自体も強いです。
比強度が鉄に比べて10倍以上あります。
比強度というのは「密度あたりの引っ張り強さ」のこと。
わかりやすく言えば、比強度が大きければ、軽いのに強いということです。
つまり、比強度が鉄に比べて10倍以上ということは、同じ重量を使えばカーボンは鉄より10倍以上強いことを意味します。
命を預ける飛行機や自動車にも使われますから、カーボンが弱いわけが無いのです。
結局のところ寿命は?
結論としては、誰にもわかりません。
よくカーボンの寿命は、10年とか15年とか言われます。
しかし、これに根拠があるわけではありません。
そもそもカーボンフレームが普及してきたのが2000年代に入ってからです。
当時のカーボンは現在のカーボンとも品質が違いますし、フレーム形状も異なります。
そのため、最近のカーボンフレームがいつまで乗り続けられるか、データがないのです。
ただ、経年劣化でカーボンフレームがダメになった話を一切聞いたことがありません。
なので、カーボンフレームは丁寧に扱えば20年は使えるのではないでしょうか?
こんなに強いカーボンはなぜ弱いと言われるか?
ここまでカーボンは強いことをアピールしてきました。
しかし、カーボンフレームは弱いと言われることがよくあります。
その原因は、
- 想定外の方向の力に弱い
- ロードバイクのカーボンはとても薄い
からです。
想定外の方向の力に弱い
カーボンは設計した通りの方向の力には強いです。
しかし、想定外の方向の力にはめっぽう弱いです。
それは、カーボンの特性によるもの。
最初の方に言ったように、カーボンは炭素繊維です。
炭素繊維は、繊維方向の力には強いけれども、繊維に対して横方向からの力には弱いという特性を持っています。
そのためロードバイクは、走っている時にフレームに加わる力を計算して設計しています。
その設計に対して想定外の方向から力が加わると割れてしまうことがあるのです。
落車したときや、ボルトをオーバートルク(強すぎる力)で締めた際に割れるのはこの特性のせいです。
ロードバイクのカーボンはとても薄い
そもそも弱いと言われる1番の原因は、ロードバイクのカーボンがとても薄いからです。
ロードバイクはレースで速く走るための乗り物です。
速く走るためには、できるだけ軽くすることが求められます。
そのため、フレームのカーボンをとても薄くする必要があるのです。
当然、薄くなるとその分だけ強度が落ちるため、衝撃で割れやすくなります。
太くすればちょっとやそっとじゃ壊れない丈夫なフレームが作れるでしょう。
しかし、そんなものではレースで勝てませんから、、
特にハイエンドのフレームは、できるだけ軽量になるようにかなり薄いカーボンが使われています。
したがって、一般的にエントリーグレードやミドルグレードのカーボンフレームより壊れやすいのが実情です。
経年劣化には強いけど、薄く作られているために想定外の力で簡単に壊れてしまうのがカーボンフレームなのです。
使えるかの判断
では、落車したときは使えるかどう判断すればよいでしょうか?
簡単に判断する方法は、亀裂がないか確認することです。
自転車産業振興協会 技術研究所の報告書が参考になります。
http://www.jbpi.or.jp/giken/l0frgpkddpf93bby/N00111.pdf
抜粋すると
・軽微な層間剥離(φ10mm 程度の領域)であれば、使用感は別として通常使用に差し支えない。
・広い範囲で層間剥離が生じている(亀裂を伴っている可能性大)場合は注意が必要。
特に、使用時にねじれ方向に力がかかる箇所は、通常使用時に伸展する恐れがある。
・亀裂があるものは損傷の伸展や、他の箇所で新たに損傷が生じる可能性があるため使用不可
※層間剥離とは、カーボン繊維が内側で剥がれることです。
簡単にまとめると
- 内部損傷は少しなら、なんの問題もないから気にしないでね
- 広く内部損傷している場合は表面に亀裂があることが多いから、亀裂がないか確認すればほぼ大丈夫(心配なら検査してね)
- 亀裂があるものは、壊れるかもしれないから使わないで
とのことです。
つまり、亀裂があったら寿命です。
危険なので使用中止して下さい。
そのため、亀裂がないかを定期的に確認しましょう。
また衝撃を加えてしまった場合は、絶対に確認してくださいね。
※あくまで簡単に見分ける方法です。落車したときや心配な際はショップに必ず相談して下さい。
寿命を縮めない対策
カーボンフレームの寿命を縮めない基本的な考え方は、丁寧に扱うということです。
当たり前の話かもしれませんが、それが大事。
具体的には、
- 想定外の力を加えない
- 室内保管
です。
想定外の力を加えない
想定されていない場所や方向から力を加えたり、衝撃を与えるのは避けましょう。
繰り返しになりますが、カーボンは経年劣化には強いですが、想定外の力や衝撃にはめっぽう弱いです。
(特にフレームによく使われるUDカーボンは割れやすいので注意。)
特に注意すべき点はこれです。
- ボルトの締め付けトルクを守る
- 衝撃を避ける
ボルトの締め付けトルクを守る
指定されている締め付けトルクを守りましょう。
締め付けトルクとは、ボルトを固定するねじりの強さのことです。
パーツやボルトには、メーカーが指定した締め付けトルクが書かれています。
金属パーツなら、少し強く締めたところで壊れることは少ないです。
しかし、カーボンとなると強く締めすぎると割れてしまいます。
もちろん締め付けがゆるいとパーツがぐらついたり、外れたりして危険です。
そのため、指定された締め付けトルクを守ることが大事。
その締め付けトルクの管理は、基本的にトルクレンチを使用します。
ボルトを締める時に、トルクの値を教えてくれる道具です。
また、自分でできる自信がない場合は、ショップに任せるのもいいでしょう。
衝撃を避ける
フレームがポッキリ折れる原因は、大体落車です。
もちろん落車をわざとする方はいないでしょうから、ほかの衝撃にも注意しましょう。
例えば、
- 立てかけておいたロードバイクを倒さない。
- 持ち運ぶとき(輪行時など)にぶつけない。
などです。
これらの衝撃で簡単に割れるわけではありません。
しかし、あたりどころが悪いと一瞬にして割れることがあります。
「こんなことで割れてしまった、、」
と後悔しないよう注意しましょう。
室内保管
室内で保管しましょう。
盗難の危険があるので、ロードバイクを外で保管している方はあまりいないと思いますが、、笑
室内で保管するのは、雨や紫外線が避けられるからです。
「あれさっきは経年劣化に強いと言ってたじゃん」と思うでしょう。
しかし、有害なものは無いに越したことはありません。
また、フレームというよりは、パーツがダメになりやすいです。
万全を期すために家の中で保管しましょう。
もしも外で保管する場合は、せめて屋根がある場所を選んで下さいね。
内部を検査する方法
使えるかの判断のところで亀裂さえなければ、ほぼ問題ないとお伝えしました。
しかし、”ほぼ”というだけで、絶対安全という意味ではありません。
キレイに内部だけ広く損傷していることも無いとは言い切れません。
そこで、フレームの内部を検査する必要がでてきます。
検査方法としては超音波で検査することが一般的です。
超音波でしたら、壊さずにフレーム内部を確認できるからです。
そのため、自分自身で確認することは困難になります。
専門ショップを頼りましょう。
有名なところで言うと、カーボンドライジャパンが超音波検査を行っています。
わずかな内部損傷でも分かって、危険かどうかも判断してくれます。
また、2022年7月から最新の赤外線検査システムを導入したそうです。
”世界中の空港、メーカー研究所で使用されている同機器での、自転車のフレーム検査は世界初の試み
ということなので、カーボンドライジャパンの検査精度は日本一と言ってよいのではないでしょうか。
カーボンドライジャパン公式サイト:http://www.carbondryjapan.com/
修理する方法
通常、割れてしまったカーボンを修理することは非常に難しいです。
そのため、自転車のショップに持っていっても修理はできません。
しかし、専門のカーボン修理業者であれば直すことが出来ます。
修理もカーボンドライジャパンが有名ですね。
カーボンドライジャパンは、補修後のカーボンフレームの強度試験も行っていて安心です。
また、修理後と感じさせないクオリティでフレームが復活します。
壊れてしまった愛車と再び走るためには、専門ショップを頼るしかありません。
結論:丁寧に扱えば長寿命
- カーボンは経年劣化が少ないので、丁寧に扱えば20年は使える。
- 想定外の衝撃に弱いので扱いに注意。
- 亀裂が入ってないか定期的に確認。
- 問題や心配があれば専門業者に連絡を。